産婦人科BSL(M4)
Class practice using simulation 6 (シミュレーターを使用した授業実践レポート)
【産婦人科BSL(M4)】 担当:竹田 純 先生
当センターで行われる産科のシミュレーション実習は、胎児の超音波スクリーニング検査シミュレーションと分娩シミュレーションの2種類です。今回は産婦人科竹田純先生による、産科シミュレーターSOPHIES MUMを使用した分娩シミュレーションの様子をご紹介します。
産科の実習は1回あたりの学生の人数が6~10名と多く、全員に3通りの分娩をさせるため、2時間通しでの実習時間中には何十回と分娩シミュレーションが行われます。その学生の手技すべてに先生は大変丁寧に評価と助言をされ、エネルギーをかけて指導されていらっしゃるのが印象的な実習です。手技の合間に概要解説や要点確認が行われ、学生が即時に手技へいかせるような流れになっています。
まずは陣痛開始以降の内診時の観点について、講義と実習が行われます。子宮口の開大度、子宮頸管の厚みや距離から展退度の判断方法、ステーションの捉え方、等の頸管の熟度についての確認です。ステーションのプラスマイナスゼロ位置を理解するため、実際にシミュレーターの膣内を内診し、坐骨棘の位置と感覚を確認します。竹田先生が一人一人にその位置を指南され、また恥骨や尾骨、腸骨の位置も確認することで全員が骨盤内と産道の構造を理解し、胎児がどこを通ってくるのかをわかりやすくイメージすることができます。
講義の様子 内診指の確認
ステーションについて解説
順番に坐骨棘の位置を確認。竹田先生が内側から位置を指導されます。
その後、分娩のシミュレーションです。正常分娩と吸引分娩、鉗子分娩の3手法を全員が行います。
分娩時は、会陰保護などの母体の保護や降りてきた児頭の支え方などの医療行為の基本はもちろん大切ですが、何よりも重要なこととして竹田先生は、「妊婦さんへの声がけ」とおっしゃっています。いきみのタイミングや力を抜くタイミングについて、妊婦さんは事前に学習していることではありますが、分娩時に医師や助産師がそのタイミングを明るく声がけしたり、きちんと医療行為や状況を説明してあげたりすることで、精神的なサポーティブができる、それが大切とのこと。吸引分娩や鉗子分娩では妊婦さんが「自分の力だけで産めなかった」というある種の敗北感のようなマイナスなイメージを持たないようにすることが大事で、「少し分娩のサポートをしますが、あくまでもお母さんが主役ですので今まで通り頑張っていきんでいきましょう!」と声がけする重要さも教えていらっしゃいました。それらの声がけも含めて「分娩シミュレーション」であるため、実習では「声がけをする」ということを大変大切にしていらっしゃいます。
実習中、初めてお産を取り上げる学生は緊張しているので、妊婦さんにとって安心感のある声がけがなかなかできません。学生にその大切さを実感してもらうため、1回目のシミュレーションは必ず竹田先生が妊婦さん役をされ、故意に失敗例を提示され、場を和ませて緊張を解くようにされています。学生は徐々に硬さがとれ、妊婦さんの気持ちに寄り添った声掛けができるようになってきます。その域に到達するまで、竹田先生によって分娩のシナリオが都度変更されながら、複数のシチュエーションでシミュレーションされていました。
また、2時間の実習中は、先生も学生も大変エネルギッシュで笑いが絶えません。産科は当直が多く、ハードワークなイメージがありますが、それ以上に楽しくやりがいのある面がたくさんある分野であります。これから進路を選択していく学生には、とにかく「産科は楽しい!多くの出産に立ち会える産科医はやりがいのある仕事!」と実感してもらいたく、楽しく充実した実習となるように心がけていらっしゃるとのことでした。
竹田先生の教育への思いの込められた、臨場感のある産科シミュレーション実習に当センターをご活用いただいております。
分娩後の児頭や肩の支え方をレクチャー
通常分娩の様子。妊婦さんへの声がけのアドバイスもされ、まるで分娩室にいるようなシミュレーションが行われます。
吸引分娩の様子