小児科BSL(M4)
Class practice using simulation 7 (シミュレーターを使用した授業実践レポート)
【小児科BSL(M4)】 担当:古川 岳史 先生
医学部4年生の小児科BSLの一環として、小児二次救命処置シミュレーターSimBabyを使用した乳幼児の急変対応実習を行っています。今回はその実習の様子を紹介いたします。
実習は古川先生からの「これまでに蘇生を行った経験はありますか?」という問いによって始まります。ほとんどの学生は「ない」との回答です。すると古川先生より、「医者になると小児の命を助ける場面に遭遇することもあります。やったことがないのに子供を助ける、と言うと成人を助けるよりもハードルが上がるような気がすると思います。それは当然の感覚です。でも医師としてやらなければならない。だからきちんとした知識をもち、子供が急変した時に落ち着いて助けられるよう、今日はシミュレーションでそれを学んでください。」との実習の目的が伝えられました。学生の表情も引き締まり、モチベーションのスイッチが入った様子。そこから実習は開始されました。
はじめのシミュレーションは「入院しているけいたろうくん、体重9Kgの乳児でPalslessVTになり意識がない、体動がない、その場合どうするか。」の設定です。主にCPRがメインのシミュレーションが行われます。まず古川先生より、蘇生に必要な一連のアルゴリズムが解説されます。年齢別の胸骨圧迫の方法や位置、深さ、蘇生に入る人数によって圧迫と換気の回数比が変わってくること等、乳幼児の場合のCPRがレクチャーされます。また、ルートが取りにくい場合の手段も解説。骨髄穿刺の位置を各自の脛骨部を触って確認し、骨髄路を確保して確実に投薬することをご教示されていました。
AEDの使い方について解説。
骨髄針の穿刺について。実際に穿刺位置を確認します。
Simbabyを使用して、いよいよ学生一人一人によるシミュレーションが開始されます。ナースコール、意識と呼吸の確認、脈の触知を行い、脈が触れないため胸骨圧迫を開始。学生は緊張気味にCPRを行います。古川先生はその手技一つ一つに評価をされ、圧迫の解除や換気量、ECクランプのポイント等、大変丁寧な助言をされます。その助言を学生が手技に活かし、シミュレーションの回数を追うごとに学生の手技の質がだんだんと上がっていくのを目の当たりにしました。
意識の確認の様子 脈の有無を確認
CPRの実践。「換気の準備を同時進行でよくできている」等、手技に対する評価がされます。
CPRを習得後、除細動とアセスメントのトレーニングです。「病室に行ったら急変していた。チームで急変対応をする」という設定で心室細動からの蘇生シミュレーションを行います。ここで心停止のアルゴリズム、ショック後の心静止のアルゴリズムを確認。また、ショック後に波形が戻らなかった場合のアドレナリン投与の理由や除細動の取り扱い等も解説されました。除細動や投薬を行うにあたり、実際に臨床現場での話をされ「普段病棟で対応している医師や看護師も、急変となると皆動揺し、現場が取り乱れる。その中で大切なことは、この子はなぜ急変したのか、その原因検索をすること。痰詰まりなら?心臓カテーテル治療中の子どもなら?どんな原因が考えられるかということを蘇生しながらアセスメントし、対応に活かさなければいけない。」とのこと。
また、「学生にとって一番大切なのはBLS。意識や呼吸の有無等を正しく判断し、ALSに繋げることができるようになってください。」とおっしゃり、繰り返し質の高いCPR、そしてALSが行われていました。
チームでの蘇生の様子
実習は4通りのシナリオを実践。合間には、積極的に質問する学生への質疑応答があり、現在入院し治療している小児の症例や急変したときの対応のお話等があり、また雑談も交えながら和やかに行われていました。大変充実された急変対応実習にシミュレーションセンターをご活用いただいております。