戻る

泌尿器科BSL(M5)

Class practice using simulation  (シミュレーターを使用した授業実践レポート)

【泌尿器科BSL(M5)】 担当:永田政義先生

医学部5年生の泌尿器科BSLの一環として、VRラパロシミュレーターやラパロDryboxを用いた腹腔鏡下手術トレーニングを行っています。

VRラパロシミュレーターは2015年のシミュレーションセンター開室当時から設置されており、泌尿器科ではその設置当初の、まだ他科ではほとんど機器が利用されていなかった頃から、手術モジュールのソフト共同開発や医学部の臨床実習等でご利用いただいております。今回は永田政義先生による医学部5年生のクルズスでの活用を紹介いたします。

 

【VRラパロシミュレーター】

ほとんど初めて腹腔鏡の手技を学ぶ学生に対し、鉗子トレーニング、鋏鉗子のトレーニング、手術シミュレーションの3種類のモジュールを使用し、段階を踏んで手術シミュレーションまで体験できるような構成で行われます。

はじめに行われる鉗子のトレーニングは把持のトレーニングです。指定のボールをつかんで画面中央のボックスへ入れる、というゲーム性の高い楽しいモジュールなのですが、画面上に映っているボールやボックス周囲の壁が、腹腔内の臓器や膜と見立てられているため、その点を念頭に置いてトレーニングする必要があります。乱雑に操作して鉗子を壁や物に突き刺したり衝突させたりするとエラーが出るようになっているため、鉗子を挿入するところから配慮が必要であり、永田先生は臨床における挿入時の注意点と併せてご指導されます。また、カメラワークのトレーニングもでき、助手がカメラを引いたり寄せたりし、術者の見たいところを予測して術野を作ります。モジュールではこのような連携した手技もトレーニングすることができます。

次に鋏鉗子のトレーニングです。このモジュールでは、指定の場所を切開するトレーニングを通して、鋏の操作と把持している部分のテンションのかけ方が体得できます。また、どこからどの順番で切っていったらよいかを考えてから鋏を入れるため、手技のプラン立てをする訓練もできます。最終的に手技の評価が総合スコアで出るようになっているため、少しずつシミュレーションに慣れてきた学生たちは高得点を狙い、よりていねいに手技の意味を考えながら取り組むようになります。

最後にこれまでの把持鉗子、鋏鉗子のトレーニングを活かし、手術シミュレーションを実践します。実際には腎がんの根治手術である根治的腎摘除術(左側)の手術で、①腹膜切開から後腹膜腔への到達、大血管の処理(②腎動脈や③腎静脈の切離)を行なうモジュールです。電気凝固切開デバイス、血管クリップや腹腔鏡用ステープラーを使用するため、使用されるいくつかのデバイスの解説とシミュレーターでの操作方法が永田先生よりレクチャーされます。モジュール内では実際に切除部位が違うと出血したり、不要なところでクリッピングすると損失エラーが表示されたりします。その時の臨床での対処についてもトレーニング中にお話があり、学生はより臨床に近い感覚でトレーニングに臨んでいました。

 

VRラパロシミュレーターでの腎摘除術シミュレーションの一部分。腹膜切開後の血管(左)と腎動脈へのクリップ(右)の様子。

 

術者と助手(カメラワーク)との連携もトレーニング可能です。

 

部位によって手技に適したデバイス選択についてのアドバイスもあります。

 

【腹腔鏡Drybox】

VR機器での手技以外にも腹腔鏡下での縫合がドライボックスを使用して行われます。一人一人に針の持ち方から糸結びのポイントまで丁寧にご指導があり、学生は長時間熱心に手技に取り組んでいました。

 

※写真は2020年1月撮影のものです。