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第3回国際テクノロジーセンター会議を開催いたしました

10月19日(水)18時より第3回目となる国際テクノロジーセンター会議を開催いたしました。この国際会議は、日本国内にとどまらず海外の大学におけるトレーニングセンターの活用や教育内容を紹介し合ったり、各施設の課題について解決策を相談し合ったりと、貴重な情報を交換する場として回を重ねています。今回は「各大学におけるシミュレーション教育について」をテーマに、日本、アメリカ、中国の3か国8施設が参加して行われました。

第1部は蘇州大学胃腸外科教授の呉永友先生と愛媛大学総合臨床研修センター教授の熊木天児先生に各施設のご紹介と、シミュレーション・プログラムや教育制度、重点的に取り組んでいるその内容をご講演いただきました。また、3年ぶりの来日となるジョンズ・ホプキンス大学胸部外科教授のMalcolm Brock先生には、第2部にて「ジョンズ・ホプキンス大学特別講演」としてトレーニングセンターの紹介やパンデミックにおけるシミュレーションプラットフォームの構築、等についてご講演をいただきました。

 

 

呉永友先生(蘇州大学)「わが病院におけるシミュレーターを利用した技能訓練」

呉先生には中国の最新の医学教育システムの状況をご紹介いただいたのち、外科の先生でいらっしゃるため、外科手術の中でも腹腔鏡手術の技術認定の観点でご教示いただきました。中国では手術件数が多く、若い医師は臨床での経験がそのまま個々の技術に繋がっていくため、トレーニングセンターで訓練する必要性が大きく唱えられていない現状とのこと。また、中国では外科の技術認定制度がなく、FLSなどの認定にとどまっているとのこと。そのため蘇州大学のトレーニングセンターにはラパロの設備がなく、ジョンソン&ジョンソンやメドトロニックなどの企業、蘇州市立病院や第一附属病院などの大病院のトレーニングセンターやアニマルラボを利用しているそうで、その活用の様子をご紹介いただきました。これから認定制度も確立され、トレーニングセンターが増えていくとのことですので、今後、この会議にてまたご状況を伺えましたら幸いです。

呉先生には最後まで日本語でご講演をいただきました。 Zoomでのご講演でしたので、会場では皆でこのように拝聴いたしました。

 

コメンテーターの北出先生は、上海のトレーニングセンターでのご経験より、中国でのアニマルラボの展望に関する質問をされていました。

 

 

熊木天児先生(愛媛大学)「ピンチをチャンスに変えた愛媛大学におけるコロナ禍のシミュレーション教育」

熊木先生には、愛媛大学臨床総合研修センターの機材、環境、スタッフを含めた設備をご紹介いただき、特色ある教育として取り組まれていらっしゃる「アイプログラム」と呼ばれる研修制度をご教示いただきました。「アイプログラム」では医学部、臨床研修医に横断的に研修を行っていくそうで、学生は臨床実習にてシミュレーターを用いて入念に手技を身につけ、研修医はより実践的にハンズオンセミナーを行われていました。特に研修医向けのハンズオンセミナーの内容は、研修医の「こんなハンズオンがあったら参加ししたい」とのつぶやきから「それはすぐにできる!やろう!」といくつかの手技におけるセミナーを開催。必要な研修が必要な時に受けられる制度とそれに応対できる瞬発力が大変印象的でした。その他にも臨床実習の集大成として医学部5年生の最後に行われる「医療シミュレーションオリンピック」こと「シミュリンピック」やスーパードクター養成コースなどの重点的な取り組みについて、コロナ禍でどのように取り組んできたのかを詳しくご紹介をいただきました。

熊木先生のご講演と質疑応答の様子。動画も織り交ぜていただき、臨場感のあるご講演でした。

 

当大学で卒前卒後教育に携わる西﨑先生よりご質問  愛媛大学総合臨床研修センタースタッフの小松様より運営面のお話もいただきました。

 

 

 

Malcolm Brock先生(Johns Hopkins大学)「Hopkins Simulations」

Brock先生には、まずジョンズ・ホプキンス大学シミュレーションセンターの設備をご紹介いただきました。立地も素晴らしいですが、施設内のトレーニング環境が素晴らしく、特に外来のシミュレーションルームはすべてがモニターで可視化され、どのようなシミュレーションを行っているのかをコントロールルームで観察できるとのこと。また、その問診シミュレーションは、標準化された患者役の方を相手に学生がトレーニングを行っており、その患者役はなんと全てのボランティアとのこと。その人員確保やスケールが壮大なこと、充実した教育環境に驚きました。また、プログラム面では、全てのシナリオをセンター独自で作成していること、実践後は全てのセッションを記録して後から修正し、それぞれのトレーニングに最適なものにしているとのこと等、スタッフが様々な職種間で構成されているからこそ充実できる面ではありますが、大変興味深く、当センターでもホプキンス大学から学び、いつかぜひ挑戦したいところです。

他にも航空機の墜落から学ぶシミュレーション(コミュニケーションを含む)の重要性やCOVID-19の時に整備されたオンラインプラットフォーム(学生対象の実習で活用)についても詳細にレクチャーいただきました。

 

Brock先生より一言一言に大変重みのあるプレゼンテーションをいただきました。聞き手の共感を得るパフォーマンスに大変感銘を受けました。

 

熊木先生もアウトペーシェントトレーニングルームに関心をもたれご質問なさっていました。

 

コメンテーターの木下先生も外科のトレーニング状況についてご質問されていました。

 

 

PROGRAM

OPENING  福永 哲先生(順天堂大学上部消化管外科学教授)

 

【第1部】

座長  峯 真司先生(順天堂大学 上部消化管外科学学教授)

登壇者  呉永友先生(蘇州大学)「わが病院におけるシミュレーターを利用した技能訓練」

登壇者  熊木天児先生(愛媛大学)「ピンチをチャンスに変えた愛媛大学におけるコロナ禍のシミュレーション教育」

コメンテーター  北出真理先生(順天堂大学 産婦人科学教授)

 

【第2部】

座長  橋口忠典先生(順天堂大学)

登壇者   Malcolm Brock先生(Johns Hopkins大学)「Hopkins Simulations」

コメンテーター  木下 淳先生(金沢大学 消化管外科学准教授)

 

ENDING  峯 真司先生(順天堂大学 上部消化管外科学学教授)

 

 

オンライン回答者/参加者

嶈 小華 先生、張 順 先生(同済大学附属上海東病院/中国)

郭 伟 先生 (長治医学院付属和済病院 胃腸外科)

吴 建忠 先生(苏州第九人民医院 胃腸外科)

明 程 先生(蘇州大学付属第二病院 胃腸外科)

伊藤智彰先生(順天堂大学静岡病院消化器外科)

山内卓先生(順天堂大学上部消化管外科学)

本庄薫平先生(順天堂大学下部消化管外科学)

愛媛大学総合臨床研修センター、愛媛大学教育関係者

ほか

 

各先生方、長い時間にわたり熱いご講義をありがとうございました。また、センターにご来場いただいた皆様方には活発な質疑応答をいただき大変勉強になりました。オンライン参加をいただきました皆様もお忙しいところご参加いただきありがとうございました。医療に従事する方々のニーズに沿ったトレーニングが提供できるよう、今後も継続して行い、各国・各大学で情報交換をしていきたいと思います。