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【シミュレーションセンター見学】ジョンズ・ホプキンス大学/ヴァンダービルト大学

11月7日より5日間、シミュレーションセンターの福永哲センター長と折田創先生をはじめとする当センターのチームがジョンズ・ホプキンス大学、ヴァンダービルト大学を訪問し、両大学のシミュレーションセンターを見学することが叶いました。センターの運営やシミュレーション教育・研修のシステムを実際に視察することが大きな目的ですが、今後教育の面で両大学と連携をはかっていくことを目指し、今回はその点での意見交換も行いました。

 

■Johns Hopkins大学

11月7日(月) 9AM Tour of Sim Hospital

ジョンズ・ホプキンス大学には3つのシミュレーションセンターがあります。1つ目は、手術室やハイリスクエリア、分娩室などでチームトレーニングを行うためのシミュレーションセンターです。もともとは手術室だったところをそのままトレーニング施設として改修し活用しています。各シミュレーションルームは臨床と同じ設備や機材の中、とてもリアルなシミュレーターを使ってトレーニングすることができ、その充実した環境に圧倒されました。

手術室

 

分娩・回復室

 

初療室

 

トレーニング機材

 

また、トレーニングルームにはコントロールルームが併設されています。ここでは、シミュレーション内容のモニタリングを行いながら、シナリオに基づいて患者の状態を変化させたり、チームがとった対応によってシチュエーションを変更するなどのシミュレーターの操作も行われます。問題解決や危険を回避するためのリアルなトレーニングが可能です。

コントロールルームからトレーニングの様子が観察でき、シナリオに沿って患者状態を操作することができる。 

 

シミュレーションでは、学習者へのフィードバックが大変重要であることを見学中に繰り返し説明いただきました。そのため、デブリーフィングのための部屋がいくつも用意され、学習者がシミュレーション中に行った判断や対応について、指導者から一人一人に合ったフィードバックがされます。

デブリーフィングルーム。シミュレーションルームの隣に併設されています。

 

 

11月7日(月) 10AM Tour of Outpatient Sim Center

2つ目のシミュレーションセンターは、主に外来診察のシミュレーションを行う施設で、12の模擬診察室があります。指導者はそのすべての様子を外からモニタリングし、シミュレーション終了後の評価や指導を行うことができます。普段の授業から模擬患者を相手にオリジナルのシナリオを使ってトレーニングが行っているとのこと。教育の質の高さとリアルなシミュレーションの重要性を実感しました。

 

12室のシミュレーション全体をモニタリングできる環境

 

眼科外来の診察室の様子。ここでOutpatientの診察シミュレーションを行います。

 

 

11月7日(月) 1PM Tour of Minimally Invasive Surgical Training and Innovation Center

3つ目のシミュレーションセンターは低侵襲の外科シミュレーション施設です。このフロアにはDaVinci3台が配備されており、カダバーをはじめリアルな手術シミュレーションを行っているとのこと。もちろん院内のトレーニングにも使用されますが、外部施設へ手術シミュレーションの環境を提供したり、コンベンションなどへの貸出しを行い、その収益をセンターの運営資金にしているとのことでした。企業の理解と協力を多大に得ているからこそ可能なスケールの大きいトレーニング施設でした。

DaVinciトレーニングルーム

 

所狭しとロボット機器が置かれています。

 

手術シミュレーションルーム

 

スタッフは3名。その一人の工学技士さんから説明をいただきました。

 

当センターのキッズセミナーを紹介をしたところ、ボランティア活動に感銘を受け、順天堂から留学している外科系の医師(内科医師も可)が、センターで行われる低侵襲手技のトレーニングをサポートしてほしいとの依頼があり快諾しました。ボランティア終了後はDaVinciなどのトレーニングも可能となりました。
このようなことはジョンズ・ホプキンス大学以外の病院ではなかなかできないことです。研究留学中に外科系手技の能力低下の心配がなくなりました。

 

 

■Vanderbilt大学

11月11日(金)8AM Tour of Center For Experiential and Assessment program Human Simulation

ヴァンダービルト大学のシミュレーションセンターは、「手術室やICUなどでチームトレーニングができるユニットのあるフロア」、「医療面接のトレーニングや評価を行えるブースのあるフロア」、「カダバーでトレーニングのフロア」の3フロアで構成されています。「体験型学習と評価センター(CELA)」と銘打っており、高機能マネキンでの技術力向上や模擬患者を相手に行う診察シミュレーションでのコミュニケーションスキル向上、そしてその評価までを行います。また各教室の実習では、シミュレーション技術プログラム(STPコース)に沿って標準化された指導がされ、その重要性を実感した見学となりました。

教育のMissionはとてもシンプルで指導者やスタッフ間で共通認識をされており、指導が徹底している印象でした。

 

【チームトレーニング】

ICU/手術室 シミュレーションルームはシチュエーションによって何通りかに変えて使えることが大切とのこと。

 

コントロールルーム     
                

デブリーフィングルーム

 

【診察シミュレーション】

模擬患者さんを標準化させるための教育を行う専従のスタッフがおり、授業を行う医師の要望を聞きながら教育プログラムを作成したりもするとのこと。ここでもフィードバックの重要性を何度もおっしゃっていました。

模擬患者の教育やプログラム、スクリプトの作成を行っているスタッフに案内していただきました。

 

ヴァンダービルト大学でも12室の模擬診察室(評価室)があり、部屋の外で観察と評価ができます。

模擬診察室

 

模擬診察室の内部とモニタリングの環境

 

今回の視察から得た米国シミュレーションセンターの素晴らしい取り組みは、当大学の教育に即した形で、当センターでも可能な部分から取り入れていけたらと思います。